2021年7月10日土曜日

Bottle (10) なみだ石 (1)


  • サイズ:胴径22×全長35mm
  • 入手:百貨店

 中学生の頃,学校帰りに寄った百貨店で購入。何でも百貨店だが,その頃の熊本市にお洒落な雑貨店などほとんど存在していなかったのだ。

 おそらく瓶に巻きつけてある「湖の底」とか「ひとりぼっち」とかいう少女趣味で乙女チックな言葉と,この透き通った小さな丸い玉の美しさに惹かれて買ったのだと思う。当時の私でさえ「なみだ石」という言葉に少し胡散臭さを感じていたし,単なるプラスティックの玉か,良くてもガラス玉だろうと思ったが,そういった物の本質は二の次で,この少女趣味な文言で飾られた雰囲気を買ったのだ。

 で,改めて「なみだ石」とは何ぞや?
 検索しても特にそれらしいものはヒットしなかった。

 似たようなので見かけたのは『幽☆遊☆白書』に出てくる飛影なる人物が持つ母親の形見が「氷泪石」と言うそうだが,私がこれを買ったのは1970年代なので,さすがに『幽☆遊☆白書』由来はありえない。少女趣味ともかけ離れていそうだし。

 また,コモド島の海岸で稀に発見される珍しい石が「海涙石」という名らしい。「人魚のプレゼント」と呼ばれているそうで,この乙女チックな文言と合致するようだが,中学生がお小遣いで買う安価な雑貨がそんな珍しい石である筈がない。これも違うだろう。
 ちなみにコモド島とは,インドネシア中南部の小スンダ列島の島で,コモド国立公園の一部。1912年に発見されたコモドオオトカゲで有名だそうだ。

 もう一つ,長崎県大村市の史跡に「涙石」というものがあるそうだ。別名「妻子別れの石」で,万治元年(1658年)に潜伏キリシタン200人が処刑のために連れ去られる前に家族と別れの杯を交わした場所に残る涙に濡れた石で,苔も生えないのだそうだ。流石にこれは,明らかにこの瓶とは無関係だ。

 そういうわけで「なみだ石」は謎なまま。この瓶の制作者が勝手に名付けた物ではないだろうか。
 兎に角これは,1970年代の少女の琴線に触れるようなグッズだったのだ。


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