もう2年以上前の2006年4月,実家の押し入れの奧からバービー人形三体と手作りの応接セットが出てきた。
丁度どこかへ出かける途中で実家へ寄ったときに見せられたので,ゆっくり見ている時間がなかったことが今でも心残り。肌も服も変色して薄汚くなった古いバービー人形は,もう一度見る前に母に捨てられてしまっていた。時間があるときだったら,再生させてあげられる方法を考えられたかもしれない。
「覚えている?」と母。空を掴むような遙かな日々の記憶をたどる私。
微かな風の気配,そして断片的な風景。
幼稚園で一緒だったヨウコちゃんだった。小学校は違ったのに,小学4年の夏まで仲良しだった。
彼女が遠くへ引っ越す前の日に,一緒に自転車で近所の湖畔を風を切って走った。それが最後,その後手紙の1通も交換することはなかった。
ヨウコちゃんが置いていった物だ。今どこでどう暮らしているかも知らない,でも私の人生の一コマを確実に彩った人。
手作りの応接セットも一緒に出てきたクッションなどはカビで変色しており復旧不可能,木製の本体だけが残された。
それは,まだ「リカちゃんハウス」が世に出る前のこと。きっと,既に亡くなったヨウコちゃんのお父さんが,娘たちのために一生懸命作った物に違いない。ヨウコちゃんの家に遊びに行くたびとても羨ましかった,まさにその豪華な応接セットだ。
思い立って,母の端布から布を選び,応接セットにクッションと椅子カバー,テーブルクロスとテーブルセンター,テーブルに飾る植木鉢を拵えてみた。
40年近い時を経てしまったけれど,再びお人形を迎えられたら,きっとこの応接セットも楽しんでくれる。
momokoも喜んでくれる。
そんな気がして。
できあがった応接セットと,アップルさんを,実家へ持っていった。
母がしばらく飾りたいと言うので,応接セットと一緒に,アップルさんも実家に置いてきた。
実はアップルさんが着ているリンゴ柄の服は,母が姪(母の孫)のワンピースを作るために買ってきた布でできている。母が作った可愛いワンピースは,好みに合わないの一言で着てもらえなかったのだった。
だから,この服を着たアップルさんを見て母が喜んでくれるなら,アップルさんに出張してもらう価値がある。
でも,アップルさんがいなくて,今日はちょっと寂しい。
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